JUGEMテーマ:博物館
キュレーターは学芸員に対応する英語である。より正確には、コレクションの部門長といったところであるが、使われ方は博物館によって異なり、一つの研究分野に多数の人が名乗る場合もある。仕事の範囲もさまざまで、ちいさな館では研究も資料管理も担うが、大規模館では資料管理の責任者としてコレクションマネジャーを置く分業体制となっている。英語圏の博物館では、研究志向の何でも屋のキュレーターから各種専門職が確立していった。それでもキュレーターは博物館の研究部門では最高位の職である。しかし、
インターネットの世界ではキュレーターの語は異なった意味で用いられている。いわゆる「まとめサイト」をつくる作業を「キュレーション」、まとめる人たちを「キュレーター」と呼ぶのだという。現実の世界でキュレーターを学芸員と理解する前に、バーチャルの世界では別の用法が確立し、それがリアルの世界にまで入り込もうとしている。すでにデジタルな理解でキュレーションを語る書籍が出版され、キュレーターは博物館と離れた意味で普及していくのかも知れない。似た例に
アーカイブがある。現実の世界ではアーカイブはいつまでたっても認知が進まず、アーキビストに到っては対応する日本語すら存在しない。一方、コンピュータの用語では、使わなくなったデータを圧縮して保存するという意味で、一般的に使われるようになって久しい。バーチャルが先でリアルが後でもよい。古いデータを保存する習慣、過去の記録を調べる体験がこれによって共有されていく。いずれ、リアルの世界でもアーカイブの価値が理解されていくと期待したい。文書や記録は捨てるのでも燃やすのでもなく、しっかり保存整理するべき財産だと。これはインターネットの
ウェブサイトにも言えることだ。博物館のウェブページは新しい情報を告知するだけではない。情報の蓄積場所としての役割もある。博物館の調査や収集活動、展示やコレクションに関する記録は毎年毎月増加を続ける。古い情報はウェブサイトから削除するのではなく、リンクを残して積み上げる。それは一種のアーカイブとして機能する。最新機器を駆使した高精度画像や巨大システムは必要ない。地道な足取りをたどる日誌や報告書のような資料集にこそ意味がある。それが博物館の歴史である。