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仕事の年報2015年度版

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    JUGEMテーマ:博物館

     

    農大ロビー展が第5回となった。幸いなことに展示期間中の入館者数は1回目の270人から右肩上がりで、296人、324人、406人と来て、今年は644人と昨年の5割増しの過去最高となった。観覧者の実数はカウントしておらず、無料の展示であることから入館者数をもって観覧者数としている。同時期に開催している他のロビー展示、講座や講演会といった普及事業の参加人数も含めた数字であるので、農大ロビー展への観覧者が増加したとは限らず、むしろ他の要因の方が大きいのかも知れない。しかしながら、今年に限っては、進化生物学研究所から借用したエピオルニス全身骨格レプリカ標本を見に来た人が多かったのではないかと思っている。目玉資料の威力である。


    特別展は学芸員の特権と当方は授業で説明している。試しにネット検索したところ、最上位の結果は自分のテキストだったので、この表現はあまり一般的でないのかも知れない。あるいは「特権」という言葉をはばかる向きがあるのかと思う。けれども自らの疑問や成果を文章だけでなく、写真や映像、実物資料でかたちにし、公共の空間を使って実現する「知的情熱の物体的表現」は、とてもやりがいのある仕事である。さらに展示の仕事は最終的な表現だけでなく、そこに至る過程と反響こそが面白い。素材の探索と調達、新たな人とのつながり、思わぬ評価や自然と集まってくる資料など、学生たちには展示の醍醐味に少しでも触れて欲しいと願う。


    空間の博物館化は駅や百貨店をはじめ多方面で進んでいる。シンプルに展示ケースを置くことから実際に美術館や博物館を設けることまで、空間を改変して展示の意図を与える動きである。それは空間に意味を与える営みともいえる。合理的効率的ではあっても無味乾燥な空間から、心地よく存在できる場所への転換である。意味を与えられた場所には人があつまり話題が生まれ、物も集まる。それは1枚の絵でも写真でもかまわない。そこに屋根を掛ければ館となる。ふれあい、にぎわい、など行政主導のキーワードもおなじところを目指している。


    名付けも意味を与える行為である。学生が手掛けるロビー展も内容に関わらず、必ず「農大」の2文字を入れてきた。会場が大学ではなく本物の博物館で行うこと、「農大ロビー展」が略称として座りがいいこと、宣伝効果を考えてのことだが、学生にとっては自分たちを知って欲しいと思う気持ちがある。そして何よりも大学の名称に愛着を持っている。違和感なく受け入れ、口に出して言える名前。単なる記号や呼称を超えた名前のもとで4年間が過ごせれば、その学生生活は幸せだったといえるだろう。

     


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