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ICOMの新しい博物館の定義に向けた議論:4月末までに集約が必要

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    JUGEMテーマ:博物館

    昨年9月のICOM京都大会では博物館の新定義が議論された。おおかたの予想どおり結果は採決の先送りであった。その後はどうなったのか。新型コロナウイルス COVID-2019 の影響でICOM関連のイベントが次々に中止となったが、いずれも京都大会の記念集会や振り返りであり、明確な目的が示されていなかった。今するべきは意見表出や議論である。じつは、昨年末から年始にかけICOMは新定義に向けての議論の手順を期限を示していた。

     

    ICOM英国委員会は、ICOM執行役員会が2019年12月9日に合意した事項として次のことを伝えている。

    ・MDPP(ICOM Standing Committee on Museum Definition, Prospects and Potentials:博物館の定義、見通しと可能性に関する委員会)が継続して博物館定義の議論進展に努めることを支持する

    ・上記の委員会をこれまでの委員会と区別してMDPP2と呼ぶことを提案する

    ・MDPP2には会員からより多くの代理人を補充する

    ・この重要な仕事を次の段階に進める期間を2020–2022年の3年間と設定する

    ・MDPP2の仕事を進展させる指針 parameters を確立する

    ICOM new museum definition – update on the next steps

    https://uk.icom.museum/icom-new-museum-definition-update-on-the-next-steps/

     

    執行役員会の結果は、2020年1月19日付けICOMのアクソイ議長から国内委員会と国際委員会の執行部に宛てた手紙で通知された。

    ・MDPP2が設置され、国内委員会と国際委員会からの代理人が追加される

    ・各委員会で議論を始めるよう、この手紙をもって依頼する

    ・ICOM役員会は、その議論はボトムアップモデルとして役員会を超え各委員会のすべてのメンバーが参加すると決めた

    ・国内委員会と国際委員会では役員に限定せず、すべてのメンバーで議論することを期待する

    ・リアルでもオンラインでも規模を問わず議論をする、メンバーから調査 surveys をする

    そしてこれらの作業を前提に

    ・各委員会の結果は今年2020年6月10–12日のICOM年次会議での博物館定義の議論に情報提供される

    ・各委員会の議論や情報は4月30日までにMDPP2に送ってほしい

    ・今年の年次会議は臨時総会や採択はなく、それらはICOM設立75周年となる2021年6月を予定する

    Museum definition - the way forward

    https://icom.museum/wp-content/uploads/2020/02/Museum-definition_the-way-forward_EN.pdf

     

    つまり、これから1か月の間は、ICOMの各委員会は会議を開き意見集約をおこない、4月30日までにMDPP2にその結果を通知する、そういう期間なのである。ICOMの会員は国際委員会(分科会)に所属していなくとも自動的に日本委員会のメンバーであるので、日本での意見集約はICOM日本委員会が主導的に進めるのが筋である。それが国内委員会の役員や事務局の責務である。

     

    この情報はICOM日本委員会のウェブサイトでは見えない。コロナウイルスではワシントンポストが出した日本語の記事が話題だが、本件も同様である。知るべき情報を他国のICOM国内委員会から知る状態は情けない。ICOMの事務局に予算と人員を投入することが急務である。何か良い方法はないものか。

     

    しびれを切らした人たちがフェイスブックページを立ち上げたが、議論は低調である。コロナのおかげて時間はあるが集会は不可。オンラインの議論には絶好の機会である。「さあ議論しましょう」というとどうしても特定の人が発言して他は黙る、とくに出遅れたと感じると沈黙してしまう。建設的な意見交換をするはずが、個人の主張の開陳、自画自賛の場となるなど。本旨から外れるが、超基本的なところの質問回答の場としても使って良いと思う。

    ICOM「ミュージアムの定義改正」についての意見交換グループ

    https://www.facebook.com/groups/544422873094972/

     

    またICOM特有の問題として、ICOMは誰のものか、誰が主役なのかという疑問がある。ひとつは、公用語が仏英西であるため言葉の問題で情報アクセスに差がでること。2つめに発言者の多くが教育担当や博物館学の専門家で研究者が少ないこと。3つめとして、ICOMそのものが文化財や美術品が主体で自然史系が少ない、つまり人間が作ったものが主流で神さまが作ったものに疎い。4つめ、大規模館、国立館、県立館では議論が現実に仕事に関連しそうに思えるが、小規模館、とりわけ地方公立館ではまったく無関係に思えること。

     

    最後の問題が最大の課題に思う。小規模館でも私立の場合、まわりに相談する人が居ない状態でICOMで救われたという話を聞く。設置者が博物館に不慣れなため、ICOMのメンバーが直接に手本や助言者となり、場合によっては標準仕様となるのだろう。ところが公立館の場合、博物館に不慣れ無理解であっても公務員や地方公共団体という標準仕様が存在し、たとえそのローカルな理解が独自研究であっても独善的にそれが適用される。博物館の世界では尊重すべきICOM基準など市町村の前では無力となる。工場(学校でも教室でも家族でも可)のなかでは憲法が停止されるのと同様の状況が現実にある。これを変えていくことが必要で、ICOM新定義よりも目の前の問題が重大なのである。これがICOM新定義の議論とリンクするとよいのだ。まずは名付けからだ。


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