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ユネスコ2015勧告とICOMの新定義

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    JUGEMテーマ:博物館

     

    ようやく『ユネスコと博物館』(雄山閣 2019)を読んだ。タイトルにあたる主要な部分を執筆された林氏は一般向けの商業出版には入りきらないユネスコの原典について、直リンクによる文献リストを作成されている。これはたいへんに助かることで、タイミングこそ異なるが2015年の勧告の作成過程が追体験できる仕組みになっている。なお、直リンクで示されたpdf文書などの多くはウェブページからリンクされている。まずはここを訪問するのがよろしい。

    Recommendation on the Protection and Promotion of Museums and Collections | United Nations Education

    http://www.unesco.org/new/en/culture/themes/museums/recommendation-on-the-protection-and-promotion-of-museums-and-collections/

     

    本書のうち、ユネスコ2015年勧告については、2017年9月18日に京都国立博物館で開催されたワークショップ「2015ユネスコ勧告を読みと解く―今後の我が国の博物館像を考えるために」の林氏の講演を下敷きに書物としてまとめたものになる。当日は台風が心配されたり演者の1人が欠席されたりした。

    「2015ユネスコ博物館勧告を読み解く」参加報告

    http://unisan.jugem.jp/?eid=8


    ユネスコは国連の専門機関であり、各国政府が分担金を負担する国際機関である。国連は地球上のほとんどの国が加盟し、総会での議決は人口や経済力にかかわらず1国1票である。事務総長が欧米以外からも選ばれるなど、第三世界の存在感が大きい場である。本書では、ユネスコ2015年勧告もアフリカや南米、中国など非欧米諸国の意見によって相当程度に修正が加えられたことが詳しく述べられている。

     

    また、タイトルには無いが中身の半分はICOMと日本の博物館業界、そして京都大会の招致の内幕だった。ここを担当された栗原氏の記述は数字や名称が多数記され、直接の典拠は示されていないが参考文献を合わせれば相当の確度で事実を追及することが可能な資料性の高い書き方になってありがたい。

     

    他方、ICOMはNGOである。会員の構成はヨーロッパが過半を占め、そのなかにはオランダのように人口に較べ会員数が飛び抜けて多い国もある(下表参照)。議決権は国内委員会と国際委員会の役員だけが持ち、当然ながら役員の出身地は欧州が多い。そしてその補正はおこなわれない。このような評決の前提条件が不平等な国際機関など存在できないだろう。ICOMは出自も現在もヨーロッパが中心の組織であり、ICOMのいう国際とは西欧諸国間の付き合いという認識でいるような気がしてならない。新定義の議論で設定された8つの指針そのものがヨーロッパの歴史を下敷きにした問題意識である。とりわけ北西ヨーロッパが中心、別の言い方をすれば英米を含む性を持たないゲルマン語諸国の価値観、先導者意識が見られるように思う。

     

    ICOMは博物館の新定義を議論する前に、代議員の平等性や代表制を再確認する必要がある。日本委員会として、意見表出してみてはどうだろうか。

     

    ICOMの会員数(京都大会総会資料 ADVISORY COUNCIL MEETING 85th and 86th SESSIONS より)

    総数の年次変化

     2015     2016     2017      2018

    30,624    37,140    40,860    44,686

     

    2018年の地域別会員数(カッコ内は%)

     地域       国数        総会員数     うち個人会員     うち機関会員

    アフリカ     22 (15.9)       385 (0.9)      375 (0.9)       10 (0.3)

    中南米      24 (17.4)      1,807 (4.0)     1,606 (3.9)      201 (6.7)

    北米        2 (1.4)       2,899 (6.5)     2,800 (6.7)        99 (3.3)

    アラブ諸国    16 (11.6)       301 (0.7)      279 (0.7)        22 (0.7) 

    アジア太平洋 25 (18.1)       2,141 (4.8)     1,874 (4.5)      267 (8.9)

    欧州     49 (35.5)     37,153 (83.1)    34,743 (83.4)   2,410 (80.1)

     

     

     

    2018年の総会員数上位国と主要国の状況

     国名    総会員数  うち個人会員  うち機関会員

    ドイツ          6,101     5,864     237

    フランス         4,845     4,418     427

    オランダ         4,614     4,538       76

    イタリア         2,250     2,092     158

    イギリス         1,949     1,887     162

    オーストリア     1,911     1,820     91

    デンマーク        1,688     1,625     63

    スイス          1,687     1,626     61

    ベルギー         1,452     1,347     105 

    スペイン         1,197      926     271

    ロシア           958      836    122

    スウェーデン        954      835    119

    アメリカ         2,028      1,963      65

    カナダ           871      837      34

    オーストラリア     596      564      32

    中国            293      216      77

    北朝鮮             1        0      1

    韓国              89        54      35

    台湾              43        20      23

    日本            402      362      40


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