第5回農大ロビー展「近藤典生と自然動植物公園」

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     第5回農大ロビー展「近藤典生と自然動植物公園」は、12月21日に借用資料を返却して完全に終了。それで返却時まで気付かなかったが、今年は近藤の生誕100年だったのだ。そのつもりがなかったので「近藤典生 1915–1997 はマダガスカルを日本に紹介し、南米からマナティーを持ち帰り、動物園に景観と柵無し展示を導入したパイオニアです」と書いておきながら、自覚がなかった。逆に進化生物学研究所があれだけ好意的に協力してくれたのは、それを意識してのことだった。無自覚のうちに記念事業をしたんだから、これは縁があったのだろう。
    この展示は、学芸員養成課程の必修科目「博物館実習」の学内実習として毎年3年生が取り組んでいるもの。例年は学生からテーマを募集しているのだが、タイトルこそ違うものの毎年1回目とおなじ「農大生が見た網走」という内容になっていた。さすがに5回目もおなじだと飽きられるし、何よりやっている自分自身が面白くない。ということで、今年に限り自分の趣味でテーマを決め、資料の選択も、写真も文章も自分で作って学生に与えた。エピオルニスの全身骨格レプリカ標本が効いたのか、観覧者数(=期間中の入館者数)は昨年の5割増しだから、まあ成功だったのだろう。とはいっても実数は644人だけど。
    学芸員養成課程の1−2年生は授業として見学に連れて行っている。驚いたのは2年生に近藤典生を知っていたという学生がいたこと。全員に聞いたのではなく、20人弱のうちに1人いたのです。さすがというべきか。自分自身は、農大に職を得るまでまったく知らず、その名を聞いたのは北見で学芸員をしている農大学芸員養成課程1期生から。曰く、名護のネオパークオキナワや伊豆シャボテン公園、長崎バイオパークなどは実習学生を受け入れてくれるはず。これらは近藤典生という先生が云々。実際、これらの施設は自分が知っていた公立の動物園とはひと味違う世界で感銘を受けた。それで今回の展示に至ったのだが、それがちょうど生誕100年とは話が出来すぎにも思える。
    「遠くに行きたい」、これを実践して弟子を数多く育てた人物だったのだろう。その思いは自分も持ち続けている。


    第5回農大ロビー展「近藤典生と自然動植物公園」
    開催期間:12月5−13日(8日間)月曜休館、最終日は午後3時まで
    会場:北海道立北方民族博物館 特別展示室
    主催:東京農業大学学術情報課程(オホーツクキャンパス)・北海道立北方民族博物館
    おもな展示資料:エピオルニス全身骨格レプリカ標本(日本唯一にして北海道初上陸)、
    頭骨レプリカ標本(アメリカマナティ、カピバラ、ワオキツネザル)、バオバブの盆栽と種子
    近藤愛用の旅行かばん、1961年アフリカ縦断調査のナンバープレート、自然動植物公園の造成工事アルバム
    ポスター制作:工藤 茜

    近藤典生 1915–1997 はマダガスカルを日本に紹介し、南米からマナティーを持ち帰り、動物園に景観と柵無し展示を導入したパイオニアです。1960–70年代には異境を歩いた探検研究者として知られ、百貨店での展示会を100回以上開催、テレビやラジオなどのメディアに登場し、少年少女向けの生物記事を多数執筆監修しました。知らず知らずのうちに近藤の文章に触れ、生き物の不思議や遠くの世界に夢を馳せた人も多かったと思われます。すっかりおなじみとなったキツネザルやカピバラは、近藤が飼育の先鞭を付けたものです。檻や柵を無くした自然動植物公園「バイオパーク」を実現する一方、生き物を資源として見る視線も持ち合わせており、しかも飼育には水やエネルギーの投入量を減らし、現状の地形を生かすなど、近藤の考える共生は現在の環境思想を先取りしたものでした。
    今春、にわかにイルカ飼育の是非が問題となりました。近藤典生が導いた自然動植物公園は、そのひとつの回答になっていると考えています。

    期間中の来館者は644名でした。これは昨年の1.5倍にあたります。
    ウェブページ「近藤典生と自然動植物公園」
    http://www.bioindustry.nodai.ac.jp/~muse/kondo/kondo_and_biopark.html
    解説書
    http://www.bioindustry.nodai.ac.jp/~muse/kondo/nodai_kondo2015_note.pdf pdf1.2MB